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リオンの横顔(1)

開始のチャイムが静かに流れた病院の工作室。
工作室は普段入院患者が陶芸と皮の工作を行う場所だが、木曜日の午後は患者が各自持ち寄ったお茶を飲みながら誰かの話を聞く場所として使われている。
出席者は、精神科の医師が1名と記録を書き留める係の看護師1名、そしてアルコール依存症の患者がおよそ20名くらいだ。
順番で話す日もあれば、誰かが挙手して全員に承諾を得られる事が出来ると好きなだけ話しをする事が出来る。医師に指名されて話す事もある。勿論、話したくない人は「何も話す事がない」と言ってもいい。
工作室の決まりは2つある。
1つは、ココで聞いた話は絶対に工作室以外へ持ち出してはいけない事。
2つ目は、誰かの話しに意見を言ってはいけない、この2つだ。
話しを聞きたくなくなったら、静かに退場する事が許されているが、工作室で皆と時間を共にした、と言う証明になる医師の印鑑は貰えなくなる。
医師の印鑑は、入院患者には大きな意味を持っている。
印鑑をより多く、より早く押して貰った患者は真面目に病気と取り組んだとされ、その分早く退院出来る確率が高くなるのだ。
大抵の場合は誰も話したがらないので順番で話しをするのだが、他の場所でも院内ミーティングと称された集いが行われているので、聞き飽きた話ばかりを何度も繰り返し聞く事になる。
工作室では、本名を名乗らずコードネームで呼び合う事になっている。
病室の外にも名前を出したくなければコードネームを貼り出しておいてもいい事になっているので、退院後、入院患者と接触を持ちたくなければ最後まで本名を明かさなくてもいいのだ。
精神病棟は、それほどデリケートに出来ている。
もしも、誰かが殺人を犯した事や、覚せい剤を使った経験について話したりしても警察に捕まる事はない。
逆にその事が外部に漏れると、病院側が守秘義務を守れなかった、個人情報保護法違反などで訴えられる側にあり、過去裁判で負けた例もある。
工作室は、病院の最上階にある最も日当たりのよい場所に位置していて、昼食の45分後に開始される話しを聞くだけの会は、余程の話し手でも出てこない限り睡魔に襲われる者が続出する。
隣同士で小突き合いながら、なんとか目を開けるようにする姿があちらこちらで見られるのだ。
チャイムの最後の音が鳴ると同時に、医師がいつもの様に咳払いを1つして「携帯電話の電源は切りましたか?」と言う言葉を合図に、この会は始まる。

 
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初めまして。加奈子と申します。
熱しやすく冷めにくいタイプなので同じ小説を何回も読みなおしてしまいます。
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